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蕩けるようなキスをして
第29章 嫉妬
我に返り、銅像の方向を見遣る。
いない。
広場を一周、見渡す。
いない。
さっきの彼女は、どこにも、見当たらない。
彼を、問い質すように、見る。
逆に、問うように、軽く小首を傾げ、微笑まれる。
なんでもない-小さく頭を振り、唇を噛む。
多少の引っ掛かりを感じつつ、陸は重ねて薄く笑い、彼女の左手にそっと、手を伸ばす。
もう少しで触れる-その寸前で、華夜子は弾かれたように自らの手を引っ込めた。
陸の表情が、強張る。
無意識の内に、彼女の横顔を窺う。
固く、きつく、結ばれた、彼女の口唇。
当然の如く、なんの返答も、もらえない。
僅かに顰(ひそ)められる、彼の、眉。
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