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蕩けるようなキスをして
第24章 誰のことも
綺麗な項に何本かの髪の毛が張り付いている。
きっと、汗ばんでいる故だろう。
こんなに残暑厳しい中、その長い長い髪を高く結わえる事なく過ごしているのだから、当たり前か。
結んでいれば、少しは涼しいのではないか-思ったけれど。
それでは、背中を流れる艶やかな髪に、見惚れる事が出来なくなってしまう。
彼女は暑いだろうけど、それは残念だから、このままでいてもらった方がいいのな-自分勝手な、どうでもいい事を、色々と考えてしまう。
「…あのさ」
繋いだ彼女の手を眺めながら、陸は呟いた。
「もう、駅に着くけど。どこに行くかにもよるけど…電車に乗るけど、いいの?」
「え…?」
「俺と一緒に出掛けたいって気持ち…まだ、変わらずに持ってくれてる?」
尋ねる陸の笑みは-弱々しかった。
陸の真意が計り知れず、華夜子は無言で続きを促す。
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