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蕩けるようなキスをして
第22章 今はいない彼
毎晩それを嵌め、あなたを想いながら、眠りにつく-だって、私には、それしかなかったの。
あなたが私に遺してくれた、唯一の、もの。
最初の頃は、ただただ辛くて。
最初の頃は、ただただ哀しくて。
指輪に指を通す度に、泣けて泣けて-ただ、泣けて。
あなたの為にも早く立ち直らなきゃ-そう、思ってはいたけれど、心は追いつかなくて。
出口のない苦しみの中、たったひとりで必死にもがいてた。
毎日毎晩こんなに哀しいのに、ここから抜け出す日がいつか本当に来るんだろうか-そう、思ってた。
心の奥底では、無理かもしれない-秘かに、そう、思っていた。
それなのに。
それなのに、最近、あなたを想い出しても、あんまり辛くない気がして。
初めは気のせい?
自分が強くならざるを得なくてそうなったから?
あまり気にも留めていなかったけれど。
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