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蕩けるようなキスをして
第22章 今はいない彼
彼女に酔ってしまいそうだった。
彼女に溺れてしまいそうだった。
諦めるどころか、どんどん深みに嵌る-彼女の匂いは媚薬の如く。
誰かを本気で好きになる-薔薇色どころか、こんなにも辛いだなんて。
これじゃあ、好きでもなんでもない女をとっかえひっかえ抱き、表面上だけでも気持ち良くなって、面白おかしく過ごしていた毎日の方が、どんなにましかしれなかった。
「間違うようなひとなんて。一緒に行ってくれるようなひとなんて。私にはいないよ、陸」
陸の耳に、華夜子の悲痛なそれが届く。
今更何を-思ったが、視線の先の彼女の表情は、とても嘘をついているようには見えなかった。
陸の眉が不審げに、寄せられる。
それじゃあ、その指輪の跡はなんだ-そう、思ったけれど。
何故そんなにも慌てふためき、隠そうとするのか-言いたかったけど。
自分が知らない何かがありそうな気がして、陸は彼女の言葉を待った。
意を決したように、華夜子は背後に隠していた左手を、静かに彼の前に晒した。
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