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蕩けるようなキスをして
第22章 今はいない彼
知ってるくせに。
もう知らないなんて言わせない。
もう知らなかったなんて言わせない。
知ってるくせに。
この気持ちを、知ってるくせに。
それでも間違う?
わざと?
どうしたくて、間違う?
どうしたくて、そんなに-誘う?
「間違うって、誰と陸を?私、誰とも間違っていない」
華夜子は左右に首を振る。
つられ、長い長い栗色の髪の毛が、背を流れる。
少し離れた場所にいるのに、熱気を帯びた風に乗り、うっとりとするような彼女の香りが、鼻腔まで届きそうだった。
実際はこちらまで匂ってなどいないのに、想像だけで十分だった。
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