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蕩けるようなキスをして
第20章 指輪の跡
目の前の彼女を見る。
初めて逢ったあの日。
なんて綺麗な長い髪の女なんだろうって思った。
それからは、艶やかな栗色の髪が背を流れるのを見る度、見惚れてた。
とてもいい匂いもして。
間近でその香りを嗅ぐ度に、どきどきした。
馬鹿みたいに、その度に。
その髪の毛が、今は彼女の横顔を半分隠してる。
自分を真正面から見据える事が出来ずに、ずっと、横を向いたまま。
ずっと、左手の見えない指輪の跡を隠したまま。
きっと、もの凄く、困ってる。
もの凄く、困らせてる。
なんで俺なんかに、そんな事を言われなきゃ-そう、思ってる。
そんなに美人で。
はっきりと自分を持っていて。
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