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蕩けるようなキスをして
第73章 RtoK
「つまり何が言いたいかって事だけど。私、確かに先生と結婚しようとしてたけど、結局それは時間がなかったからで。少しでも一緒にいれる最終の手段と選んだ事で。そんな状況じゃなければ、当然まだ結婚しようと思ってなかったに決まってるし。将来の事は将来で、また別の話で。だから陸と比べて、高階先生の方が好きな気持ちが大きかったとかじゃないって事。…上手く言えないけれど」
そこで一旦区切り。
華夜子は哀しいのか、愉快なのか、そのどれでもないのか-或いは、その全てか。
彼女にしか判別不能な微笑みを湛え、言った。
「そもそも。夫になるひとは名前しか書いてないし。保証人の欄は二名分空白だし。あんな不備だらけの届、受理されないよ。先生と私、例え書類の中でも、例え一日だけでも、遂に一緒になんかなれなかった。最後まで大学の教授と、ひとりの学生の関係のままだった。だから陸が…もしも自分の方が、何か劣っているんじゃないかって思っているとしたら、そんな必要は全然ない」
自分の心を見透かされていた事に、陸は恥じ入るしかない。
何も言えない。
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