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蕩けるようなキスをして
第73章 RtoK
それを握り締め。
一呼吸置き。
華夜子は勇気を出して、コートのポケットから右手を静かに出した。
歩道の真ん中に佇んでいたままだったので、陸に促されるように、邪魔にならない端に寄る。
明らかにそれを握る手は震えていた。
開いて確認したいのに、固くなってしまった指先はなかなか言う事を聞いてくれない。
華夜子が途方に暮れ始めた時。
温かな陸の両手が華夜子の右手を包み、助けるように、指をいっぽんずつ開いてゆく。
果たして彼女の掌の中にあったのは-銀色の、指輪だった。
真新しく光り輝くそれを目の当たりにした途端、堪え切れないものが目の奥から溢れてくる。
「…これ」
「うん?」
「…誰の?」
零れた華夜子の問いに、陸は脱力する。
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