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蕩けるようなキスをして
第73章 RtoK
いつまでもこうしてふたりでいたかったけれど、そうも言っていられない時間となってきた。
授業に遅れないように、陸は華夜子の手を引き、玄関に向かう。
「行こ、華夜-」
鞄を手に、ふたりはアパートを後にし、冬の張り詰めた空気の中へ足を踏み出した。
今年は珍しく積雪が多い。
昨夜降った新雪が更に上乗せされていた。
大学への道のりを歩く今朝は雪は舞っておらず、ただでさえ足場がおぼつかない華夜子にとっては、それだけでもありがたかった。
朝日を浴び、辺り一面はきらきらと輝いていた。
自分に歩調を合わせ、ゆっくりと隣りを進んでくれる彼の優しさに嬉しくなりながらも、ふと困った事に気付く。
昨年末にどこかで失くしてしまった代わりに、新しい手袋を冬休みの間に購入していた。
その黒い手袋を、さあ嵌めようとしたのだが-思えばアパートを出てすぐより、右手は彼と繋がれたままだった。
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