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蕩けるようなキスをして
第72章 最愛
「…そういう訳ではないけど」
「なら、話してよ。聞きたい」
陸は華夜子の髪に口付けた。
華夜子はちょっと安心して、遠慮がちに続ける。
「逢えない代わりに、電話やラインは毎日。とても忙しかっただろうに、先生もいつも暇さえあればきちんと返事を返してくれてた。凄く幸せで、凄く満たされてた。でも-」
そこで一旦言葉を区切り、華夜子は陸に抱き付いた。
「やっぱりこうして直接顔を見て、話して、抱き締めて欲しくなってしまう。それが一番いいに決まってる。…先生とは、それが無理なのは百も承知だったはずなのに。どんどん欲深くなって…言ってしまったの」
「…何を?」
陸は少しどきどきしながら、華夜子に尋ねる。
「淋(さみ)しいって。これから先生が実家に帰って、向こうの大学で働くようになったら、もうひとめ大学の中で逢う事も叶わなくなる。ただでさえ淋しいのに、そうなったら私、どうしようって」
-口走ってしまったの。
その日の事が思い出され、華夜子の双眸が狭まった。
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