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蕩けるようなキスをして
第69章 求める夜
自分を労わるその声音は。
自分を抱くその腕は。
いつもの優しい彼だった。
ただそれだけの事が堪らなく嬉しくって、彼の胸に押し付けるように顔を寄せる。
そんな彼女が堪らなく愛おしくって、陸もまた離すまいと強く抱き締めた。
「俺、今まで褒められた生き方なんて、ずっとしてこなかったから。だから余計に、誰かの事をどうこう言える人間じゃないんだよね。そもそも、他人が非難する権利なんて、最初から誰にもないって思っているし。だから華夜の事も…そりゃあ、色々思ったし、色々考えたけど。一日悩んで、自分の中で全部受け入れた。華夜の過去がどうとか…そんな事をもしも口にするのなら、俺の方が余程華夜に言えないような事、いっぱいしてきてるし。ただそれを言葉にするかどうかの違いで。俺に全部を話してくれた華夜の事、どうか思うなんて。どうも思わないよ。華夜を好きな気持ちは変わらない。それどころか、華夜の勇気を凄いと思った」
「…凄い?」
褒められるような事-何もしてないのに。
怒らせるような事は-身に覚えがあり過ぎるけど。
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