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蕩けるようなキスをして
第65章 返事
先生が一歩進み。
私も一歩進み。
足取りを追っていけば、やがて先生は、研究室の部屋の中へ消えて行った。
今まで一度も、足を踏み入れた事はなかった。
来てみたかったけれど、理由がなかった。
来てみたかったけれど、扉を開けた途端、先生がどんな表情で私を迎えてくれるのか-怖かった。
だから、なかった。
だから、躊躇した。
今このドアをノックしたら、嫌がられるのは目に見えている。
そこまで考えて、乾いた笑いが零れた。
嫌がられたら-なんて。
もう、とっくに、好かれてなどいない。
ずたずたにして欲しかったのではないか。
ぼろぼろに傷付けて欲しかったのではないか。
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