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蕩けるようなキスをして
第65章 返事
「ご飯ひとつ食べるにしたって、陸とだと嬉しさが違う。最初は人目が気になりもしたけど、今は流石に慣れたって言うか、開き直れるようになったし。こんなに周りの目を惹いて、どこに行っても注目の的で、もっと自惚れても良さそうな人なのに、そんな事もしない。いつも優しく気を遣ってくれて…私を、大事にしてくれてるのが、よく分かる」
陸が寄越してくれたフォークを手に、華夜子は微笑む。
「お店のドアは必ず開けてくれる。席に着く時も、座りやすい方の椅子を勧めてくれる。メニューは開いて、一番に私に見せてくれる。料理が先に来ても、私と一緒に食べようって待っててくれる。手元になければ、フォークもスプーンも今みたいに渡してくれて…至れり尽くせりだよ。私、どこのお嬢さまかと錯覚しちゃうじゃない?」
からかうように陸を見れば、照れ臭そうな表情で、短く告げられる。
「そんなの…当たり前の事だろ。俺だけが特別なんじゃない」
「そうかな。席に着けば我先にってメニュー広げるひともいるし、料理が運ばれたらひとことも断りなく、先に食べ始めちゃうひともいるよ。それは彼氏に限らず、友達とかでも。…誤解しないで欲しいんだけど私、陸になんでもやってもらって当たり前だとは思ってないよ。メニューだって先に見てもらって全然構わないし、冷めちゃうと美味しくなくなってしまうから、料理が先にきた時は食べて欲しいって思ってるし」
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