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第64章 代わりじゃない

そんな彼女の心中を読み取ったかのように、陸は視線をこちらに送った。
「まあ、どんな華夜でも俺は好きだよ。だからこれからも、どんな時でもどんな場所でも、俺はしたいと思ったらするよ？」
扇情的な眼差しで、誘うように笑われ。
先程彼と触れ合っていた唇が、瞬時に熱を帯びてゆく。
もう、好きにしてもらっていい－彼に囚われ、華夜子は思った。
「行こ」
陸が止まった足を促す。
華夜子は素直に従い、歩き出す。
「寒くない？」
陸が気遣ってくる。
「…うん」
「昨夜（ゆうべ）に比べたら、天気いいしな」
「…うん」
「気持ちに余裕があると、寒さもあまり気にならない気がする」
独り言のように呟いて、陸は繋いだ手の温もりを確かめる。