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蕩けるようなキスをして
第64章 代わりじゃない
人の目なんか気にしないで。
なんにも知らない他人に何を言われたって。
堂々としていたのに。
たった一度でも良かったから。
こうして-…。
知らず、泣き出しそうな顔をしてたのだろうか。
ポケットの中の繋がれた手に、力が籠った。
華夜子は我に返る。
「…ごめん。なんか思い出させるような事、訊いてしまって」
そう言う陸の顔もまた、後悔に縁どられ、沈んでいた。
華夜子は弱々しくも、はっきりと否定してみせる。
「陸のせいじゃないよ…ごめんね、私こそ。なんか暗くなっちゃって」
努めて明るく振る舞おうとしたところを、陸に遮られる。
「俺は高階先生じゃないし、立派な先生の代わりが務まるなんて、自惚れてもいないけど。…でもそれ、俺じゃだめかな?」
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