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蕩けるようなキスをして
第2章 櫻葉陸
あっと言う間に追いつかれ、右隣りから覗き込まれる。
「…ある訳ないじゃん」
華夜子は身体を大きく仰け反り、彼から離れる。
「その目立つ格好で、いつも違う女連れて大学の中歩いてれば、嫌でも目につくわよ」
昨日の事もあるので、懲らしめの意味も込め、睨み付けてやる。
そして、言い放つ。
「薬学部二年生の櫻葉(さくらば)陸を、この大学で知らない人はいないんじゃない?」
嗤ってやろうとしたのに。
それより早く、彼自身が、喉を鳴らした。
「何?俺ってそんな有名人なの?おねーさんが名前知ってくれてるくらい?」
「…自覚がないとこがまた凄いよね」
再び、皮肉ってやる。
なのに。
「な~んてね。実は知ってる。俺がすげー有名人だって事ぐらい」
悪戯な子供のような笑顔で、陸は小さく舌を出した。
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