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蕩けるようなキスをして
第61章 恋と憧れ
まるで昨日の事のように思い出される、先生の姿。
もっとも。
それは何も初日だけに限らず、真冬でさえも、額に薄っすらと汗が浮かんでおり-いかに真剣に、情熱的に、私達に向き合っているかを証明していた。
先生は学生だからといって私達を見くびったり、手を抜いた講義は一切しなかった。
あんなに立派で、あんなに頭がいいひとだったのに、偉ぶったところは遂に一度も目にする事はなかった。
いつでも私達学生の目線で、いつだって分かりやすい講義を行う事に、全霊をかけていた。
それは決して、大袈裟などではなく。
尊敬の念を抱(いだ)くようになり、熱を帯びた瞳で高階先生を追い始めていた。
ある日の事。
先生の講義が終了し、学生達が身支度を整え、大教室を後にし始めた頃。
教卓の上で、高階先生も授業の片付けをしていた。
その姿をいつものように追い掛けていた、その時。
ボールペンが、教卓の上から転げ落ちた。
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