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蕩けるようなキスをして
第61章 恋と憧れ
「あ…!」
思わず、声を上げてしまう。
けれど、先生は気付いていない。
ボールペンはこちらに向かって床を転がり、程なく止まった。
逡巡したのも、刹那。
急いで立ち上がり、ペンを拾う。
そのボールペンを手に、そっと、先生に近付いた-。
俯いてテキストを片付けていた先生。
自分に向かって歩いて来る誰かに、やがてゆっくりと顔を上げる。
視線が合った瞬間、呼吸が止まった。
どうしたの、私-自分自身が分からなかった。
「あの…これ…あの」
真っ白な頭の中では、言うべき言葉も探せなかった。
しどろもどろに呟けば、やがて私の手の中に収まるそれに気付き、先生は微笑んだ。
「拾ってくれたんだ?ありがとう…えっと?」
高階先生は探るように、こちらを見てくる。
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