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蕩けるようなキスをして
第60章 T
「別に聞きたくもないだろ?」
華夜子の返答など待たずに、陸は笑いながら質問を重ねてくる。
「俺も同じだよ」
答えられない華夜子を横目に、陸は噛み締めるように、呟く。
「俺も華夜の元カレの話は…元カレとの事は、そんなに聞きたくはない、かな?」
半分冗談。
半分本気。
微かな笑いを張り付けたまま、陸は華夜子を見詰めてくる。
華夜子は何も言えない。
それは何も彼が特別なのではなく、世間一般的に極当たり前の感情だ。
現在付き合っている、彼氏や彼女の昔の交際相手の事は-気にならないと言ったら嘘になる。
けど、その相手との事細かな思い出などは-それはそんなに、知りたくないだろう。
いい感情は持てないはずだ。
嫉妬してしまったり。
現に自分だって。
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