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蕩けるようなキスをして
第10章 卵焼き再び
見られたら。
これ以上ないくらいに、動揺してしまう-。
やり場のない視線を適当に流し-気付く。
「…華夜子」
教室の真ん中、教卓の真上に飾られた壁掛けの時計。
「華夜子、次の試験の時間まであと、十五分くらしかないけど…?」
彼女が昼食にまだ何も手を付けてない現実に、陸は不安になる。
陸の言葉に、自らも時計を見上げて確認する華夜子。
しかし、多少は焦る素振りを見せたが、すぐにしっかりと箸を持ち直した。
「十分(じゅっぷん)あれば、大丈夫。試験の教室ここからすぐだし。私の特技、早食いだから」
冗談なのか本気なのか-何れかの区別はつき兼ねたが、陸は喉を鳴らした。
「特技、早食いって。なんだそれ。しかも女が」
笑いつつ。
ただでさえ時間のない時。
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