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蕩けるようなキスをして
第57章 クリスマス・イヴ
「は?いや、分かんだろ。散々話したじゃん。あれ聞いて理解出来ないって、どんだけの鈍感だよ」
意地の悪い事を言い出す華夜子に、陸の頬が僅かに引き攣る。
「陸だって分かんないって言った。鈍いのはお互い様でしょ」
言ってよ。
言ってよ、名前。
分かんないんじゃない。
言えないだけ。
あなたから言ってくれないと-。
横を向いた華夜子に、陸は暫し何かを考え、やがて告げた。
「ふうん…じゃあ、抱き締められないね。残念」
思いがけないひとことを突然言われ、華夜子は素早く顔を戻した。
視線がぶつかると、陸は口元を上げた。
「だって。お互い分かんないままなら、なんも出来ねーじゃん。…俺は泣いてたから、抱き締めて慰めてやりたいって思ってたけど」
-でも、出来ねーじゃん。
顔を逸らす陸に、華夜子の中で何かが弾けた。
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