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蕩けるようなキスをして
第57章 クリスマス・イヴ
泣いたり、泣き止んだり-自分でもほんと、どっちなんだって思うけど。
自分でもほんと、忙しいなって思うけど。
「…私、知ってるんだから」
異変をなんとなく感じ取った陸が彼女を見れば-数秒、遅かった。
俯いた華夜子の瞳から溢れた水滴が、アスファルトの上の雪を溶かし始めてた。
肩を上下させながら-それでも華夜子は一生懸命、言葉を紡ぐ。
「私、知ってるんだから。陸の待ってた彼女が私だって事ぐらい。ちゃんと、知ってるんだから…っ」
華夜子の叫びに、陸は素直に驚き、彼女に釘付けとなる。
さっきから往来する人にちらちら見られてはいたが、再び注目を集める事となる。
きっと、痴話喧嘩だとでも思われてるのだろう。
でも今度ばかりは、そんな他人の目も全く気にならなかった。
いきなり喚き始めた、彼女の次の動向の方がずっと、気になっていた。
「…さっき。あの彼から助けてくれた時、言ってたじゃん」
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