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蕩けるようなキスをして
第57章 クリスマス・イヴ
その手を彼女に触れたくて。
この両手で彼女を抱き締めたくて。
でも。
その前に-聞かせて。
「華夜が待ってた彼氏って誰?誰の事?」
陸の質問に、華夜子の泣き声が一旦、ストップする。
「…誰って、そんなの。そんな事、わざわざ言わせないでよ。分かるでしょ」
「知らない。もしかしたら、俺の勘違いかもしんねーし」
「勘違いって…勘違いって…今までの話の流れからして、分かるでしょっ。こんな時に意地悪止めて」
「苛めてなんかない。ほんとに分かんねーんだよ。ちゃんと分かんねーから、何も出来ない」
「何も…?」
「泣き止ませてやりたいって思っていても、指一本触れられない。抱き締めてやる事も出来ない。…彼氏だって、思われてないなら、そんな事どれも出来ない」
だから、はっきり聞きたい-瞳孔を開(ひら)いた華夜子に、陸の顔が近付いた。
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