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蕩けるようなキスをして
第57章 クリスマス・イヴ
華夜子の消え入りそうな問い掛けは、陸の迷いを一瞬で取り払った。
あるよ-陸は即答した。
「前にも言った事があるけれど。俺の女は、待つに十分値する。そういう女だ。だから待ってた。だから待てる。自分にとってなんの価値もない女をずっと待ち続ける程、流石の俺も暇じゃない」
見慣れた扇情的な眼差しを送られ、華夜子は急いで目を逸らす。
華夜子は、速まり始めた心臓をなんとか静めようと押さえつつ、開口する。
「…でも。でも、とっても酷い事をした。許してくれなくても仕方ない事をした。…今夜だって、約束をしておきながら、来れたのはこんなに遅い時間だったし。…自分から行きたいって言ったくせに結局、予約してもらったお店にも行けなかった。こんなに酷い事を、いっぱいされてるのに。それでも-」
-それでも?
華夜子の眉が顰(ひそ)められ、一度は引っ込んでいた涙が、再び滲み出す。
「色々あったその瞬間は、正直に言うのなら頭に血が上(のぼ)った。でも、時間を置いて冷静になって考えてみれば、すぐに分かる事だった。俺の大事な彼女はなんの理由もなく、そんな事をしない。約束を簡単に破ったりなんかしない。その理由を、なんで俺はあの時ちゃんと聞いてあげられなかったんだろうって、自分をずっと責めていた。悪いのは彼女じゃない。俺だ」
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