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蕩けるようなキスをして
第57章 クリスマス・イヴ
華夜子はようやく、陸を見た。
もっと別の何かを言いたげな瞳で。
彼女の真実の思いを読み取ろうするが-残念ながら、陸には計り兼ねた。
「…彼氏とって、言おうとして。でもちょっと色々あったから、そう思ってるのは、自分だけかもしれないって思い直して。じゃあ誰なのかって訊かれれば、それも説明が難しくって。…そもそも。待ち合わせを本当にしているかと問われれば、それも厳密にはしてなくって」
「…」
「みんな曖昧で。どれもはっきり答えられるものがなくって。そんなの相手には分からない事なんだから、嘘でも適当に言えばいいのに、変なとこで真面目に悩み始めてしまって。黙ってしまったら『彼氏に約束をすっぽかされた、かわいそうな彼女』にされちゃって。気付けば、腕を掴まれてた。『じゃあこれから一緒にどこかに行こうよ』って-」
-そこを、陸が助けてくれた。
微かに、華夜子は笑った。
「ほんと、はっきりしない私が一番良くないね。だから腕なんか引っ張られて。これからは、ちゃんと、しっかり、断るようにする」
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