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第53章 留以

陸は食い入るように、留以を見詰めた。
そんな彼の視線を受け、留以は無言の笑みを返す。
今なら。
今しか。
彼女がどんな男を愛したのか。
彼女がどうしてまた指輪をしているのか。
『Ｔ』が誰なのか。
畳み掛けるように留以に問おうとし、その本人に遮られた。
「教えてあげたいのは山々だけど。華夜子が喋らない事は、私も何も言えない。ごめんね」
先に胸中を見透かされ、告げられた。
しかし。
今日の陸は、食い下がる。
「この大学の奴だったんだろ？そうだろ？」
最近の彼女は、大学の至る所で、懐かしさに、切なさに、目を細めてた。