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蕩けるようなキスをして
第53章 留以
大仰に溜め息を吐かれ、陸は返す言葉がない。
早朝のカフェテリアの一件は。
何故か-と言うか、居合わせた数少ない学生の中の誰かによって、あっと言う間に大学中に知れ渡っていた。
彼女を泣かせ、あまつさえ号泣してるのに、その場に置き去りにしてきた。
傍から見れば、最低最悪の男だ。
それに至るまでの経緯を知らないくせに。
その一場面だけ切り取られれば、100%誰がどう見ても、自分が悪者だ。
ひとの気も知らないで-陸は苦々しく思ったが、いちいち状況を説明する訳にもいかず。
理由はどうあれ、泣きじゃくる彼女を置いて、踵を返したのは紛れもない事実で。
その後ろめたさから、例えどんなに『女を泣かせたサイテー男』と罵られようかが、説教されようか、黙って受け止めてきた。
確かに、泣かせた。
確かに、最低だ-誰に指摘されるでもなく、自分自身が一番感じてる。
乃愛に昼休み廊下で捕まった際には、時間いっぱい怒鳴られ続け、お蔭で昼食もとれなかった。
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