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蕩けるようなキスをして
第50章 吹雪
脱いだばかりの上着を手に、陸は言った。
「きっと今は、ふたりでいると、お互いに困ってしまうと思うから-」
手を伸ばしかけ-悩みに悩んだ末に、陸はその手を引っ込めた。
せめて彼女に触れてから、立ち去りたかったけれど-醜い嫉妬心が邪魔して、叶わなかった。
激しい妬みの感情を必死に抑えて、穏やかな自分を装う事で精一杯だった。
カフェテリアの出入り口に向かう、陸の背中。
華夜子は、彼を引き留き留める事は出来なかった。
ちくちく痛む胸が、切な過ぎた。
左の掌を、そっと、開く。
銀色に光る指輪。
彼が拾ってくれた。
彼が握らせてくれた。
激昂されて当然だと覚悟してた。
自分からのものは拒否したくせに、なんでこれは持っているんだと。
何故まだこれを、大事そうに嵌めているんだと。
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