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第48章 束の間の

「…こ、こんな人通りの激しい場所で、し、してくるなんて…どうかしてるんじゃないのっ」
恥ずかしくって、ほんと、穴があったら入りたい。
真っ赤になって詰（なじ）るが、肝心の陸はどこ吹く風で－笑ってる。
身を捩り逃れたいのだが、少しと言うか－直接的ではないが、半分は触っているようなものな彼の手が、動いたはずみに完全に胸に触れてくるのが怖くて、それも出来ない。
喚き出した華夜子を軽くあしらい、陸は平然と言ってのける。
「うるさいと黙らせるって、わざわざ予告してやってたじゃん」
「…ほんとにする馬鹿いないでしょーがっ」
強い口調で反発してくる華夜子に、陸はわざとらしく、大きな独り言を呟く。
またなんだかうるさい気がするなぁ－最高に悔しいが、華夜子は黙るしかない。
そんな彼女の様子に隠れて笑みを漏らしながら、陸は華夜子に告げた。
「俺には華夜だけなんだよ。信じてよ」
陸の言葉に、怒り心頭だった華夜子の表情が変化する。
「俺の隣りにいてよ、華夜。華夜以外、俺はいらない。だから－」
もう二度と、くだらない、どーでもいい事で悩みませんって－そう、言えよ。