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第47章 彼氏彼女

それを彼女に分からせなければならない。
それを彼女に分からせる為に。
その唇に。
その身体に。
はっきりと、教えてやりたかった。
「りく…」
切ない溜め息を漏らし、背にしがみ付く彼女の両手は、完璧に彼に支配された証だった。
ここが誰かの目が常にある場所だという事も、もう、関係なかった。
身体も、意識も、全て彼に攫われ、恍惚した表情で、ひたすら彼を欲していた。
華夜、そろそろ行こう？－耳元で囁かれるが、素直に『うん』と言えない自分がいた。
少し前までは、すぐにでもここから立ち去りたかったのはずなのに。
陸はその理由を知っていながら、敢（あ）えて訊く。
「行かないの、華夜？」
「…行く」
掠れた声でどうにか答えるが、心の奥底ではまだ行きたくない－そう、訴える自分がいた。