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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

「いや、何もついていなかった。気にしないでくれ」
如水は特に怒る事もなく手を離すと、あきを見つめる。如水がどのくらい親しい仲なのか分からないあきは、下手に何も言えず向こうの動きを待つしかない。すると如水が口を開くよりも早く、隆景が早足でやってきた。
「官兵衛! 来るなら便りをくださいと言っているでしょう!」
「おお、隆景!」
如水は隆景の姿を見つけた途端、目を輝かせ杖を放り出し両手を握る。互いを呼び捨てで呼び合う親しげな様子に、あきは目を丸くするしかなかった。
「秀俊、正成殿。驚かせてしまいましたね。知っての通り、これは黒田官兵衛。今回の養子の件を取り持った私の親友です。時たまお忍びで、便りもなく勝手に遊びに来るんですよ」
「お忍びじゃないさ、俺はもう隠居してるんだ。どこへ遊びに言っても自由だろう」
「秀俊、こんな事を言い出すお調子者ですから、これからはかしこまらずに接して構いませんよ。ですが、態度は見習わないでくださいね」
隆景は頭を抱え溜め息を漏らし、あきに釘を刺す。一方で如水は、失礼も気に留めず笑っていた。

