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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】 其の参

「ここではないどこかなら、どこでも良い」
お彩の眼から涙の雫がしたたり落ちる。
市兵衛がいるこの江戸の町を離れたい。別れてもなお、この胸から消えることのない男の面影なぞきれいさっぱり捨て去り、新しい土地で伊勢次と二人、やり直したい。
お彩は切にそう願った。
伊勢次はお彩が哀れでならなかった。お彩は今、追いつめられ、行くべき先を見失っている。いや、この広い世間のどこにも己れの居るべき場所、心を寄せる場所を見つけ出せずにいる。
この女を守ってやりたいと、伊勢次は心底から思った。この自分が今日からは、お彩の居場所になる。お彩はずっとこの自分の傍に居れば良い。そうすれば、いつだってどんなときも、惚れた女を守ってやれる。伊勢次はこの時、固く己れに誓った。
お彩の眼から涙の雫がしたたり落ちる。
市兵衛がいるこの江戸の町を離れたい。別れてもなお、この胸から消えることのない男の面影なぞきれいさっぱり捨て去り、新しい土地で伊勢次と二人、やり直したい。
お彩は切にそう願った。
伊勢次はお彩が哀れでならなかった。お彩は今、追いつめられ、行くべき先を見失っている。いや、この広い世間のどこにも己れの居るべき場所、心を寄せる場所を見つけ出せずにいる。
この女を守ってやりたいと、伊勢次は心底から思った。この自分が今日からは、お彩の居場所になる。お彩はずっとこの自分の傍に居れば良い。そうすれば、いつだってどんなときも、惚れた女を守ってやれる。伊勢次はこの時、固く己れに誓った。

