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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】 其の弐

伊勢次は、お彩の涙を見て慌てた。
「おい、また、泣くのかよ。勘弁してくんな。以前(まえ)からお彩ちゃんは泣き虫だったけど、ちょっとひどくなっちまったんじゃないのか!!」
冗談めかして言うその口ぶりに、お彩もつられて笑った。
「それにしても」と、伊勢次が真顔で言う。
「腹に赤子がいるってえのに、そんなに食が細くて良いのか。そんなんじゃア、赤ン坊が育たねえんじゃないのか」
まるで、腹の子の父親のような台詞に、お彩はまた、じんときた。
せめて市兵衛に、伊勢次ほどの優しさがあれば良かったのに―。ふとそんな想いがちらりとかすめ、お彩はその想いを打ち消した。
「おい、また、泣くのかよ。勘弁してくんな。以前(まえ)からお彩ちゃんは泣き虫だったけど、ちょっとひどくなっちまったんじゃないのか!!」
冗談めかして言うその口ぶりに、お彩もつられて笑った。
「それにしても」と、伊勢次が真顔で言う。
「腹に赤子がいるってえのに、そんなに食が細くて良いのか。そんなんじゃア、赤ン坊が育たねえんじゃないのか」
まるで、腹の子の父親のような台詞に、お彩はまた、じんときた。
せめて市兵衛に、伊勢次ほどの優しさがあれば良かったのに―。ふとそんな想いがちらりとかすめ、お彩はその想いを打ち消した。

