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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】 其の弐

「つまりは、お前はいまだに京屋市兵衛にそれだけ惚れてるってことなんだな」
伊勢次の口調は、どこか淋しげな響きを帯びている。
そんな伊勢次にお彩は返す言葉もない。伊勢次がいつになく強い光を宿した眼でお彩を見た。
「だが、今度こそ、はっきり言うぜ。お彩ちゃん、京屋市兵衛とは別れろ。あの男はお前が本気で惚れるだけの値打ちなぞありゃしねえ」
お彩は涙ぐんでうつむくしかなかった。
伊勢次の言葉は全くの道理であると自分でも認めざるを得ない。そのことが余計に哀しみを誘う。京屋市兵衛が自分に愛される価値のある男か―云々の話はともかく、市兵衛がこれまで取ってきた行動の数々を見れば、残念なことに、またしても、お彩は反対するすべを持てないのだ。
伊勢次の口調は、どこか淋しげな響きを帯びている。
そんな伊勢次にお彩は返す言葉もない。伊勢次がいつになく強い光を宿した眼でお彩を見た。
「だが、今度こそ、はっきり言うぜ。お彩ちゃん、京屋市兵衛とは別れろ。あの男はお前が本気で惚れるだけの値打ちなぞありゃしねえ」
お彩は涙ぐんでうつむくしかなかった。
伊勢次の言葉は全くの道理であると自分でも認めざるを得ない。そのことが余計に哀しみを誘う。京屋市兵衛が自分に愛される価値のある男か―云々の話はともかく、市兵衛がこれまで取ってきた行動の数々を見れば、残念なことに、またしても、お彩は反対するすべを持てないのだ。

