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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】 其の弐

京屋で過ごした四カ月間、市兵衛が良人としてお彩を守ろうと努力してくれたとは、どう贔屓目に見ても思いがたい。
お彩を迎えてからの市兵衛の瞳にひそむ翳りは、以前より更に濃くなっているようにさえ思えた。
初め、側付きの女中おみよから、かつて市兵衛の身近で起こった悲劇を聞かされた時、お彩は思った。長らく市兵衛の眼を翳らせていたのは、他ならぬその出来事ゆえだったのだ、と。
しかし、よくよく考えてみて、それは違うと判った。市兵衛には、誰にもどうしようもない闇がある。市兵衛自身、その闇を埋めようとあがけばあがくほど、その闇の中に絡め取られてしまうようだ。
お彩を迎えてからの市兵衛の瞳にひそむ翳りは、以前より更に濃くなっているようにさえ思えた。
初め、側付きの女中おみよから、かつて市兵衛の身近で起こった悲劇を聞かされた時、お彩は思った。長らく市兵衛の眼を翳らせていたのは、他ならぬその出来事ゆえだったのだ、と。
しかし、よくよく考えてみて、それは違うと判った。市兵衛には、誰にもどうしようもない闇がある。市兵衛自身、その闇を埋めようとあがけばあがくほど、その闇の中に絡め取られてしまうようだ。

