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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】 其の弐

お前は性根の座った女だよ。そのお彩ちゃんが京屋を飛びだしてきたとなりゃア、その裏にどれほどの経緯(いきさつ)があるか、詳しくは聞かずとも自ずと知れるってもんだ。お彩ちゃん、酷なことを言うようだが、あの男には、お前に値するほどのものはありゃしねえよ。惚れた女なら、手前の生命を賭けてとことん守り抜いてやるのが男ってもんだろうが。見ず知らずの人間ばっかりの京屋の中で、お彩ちゃんにとっちゃあ、あの男だけが頼りだったはずだ。それなのに、あの男はお彩ちゃんの何一つ判ってやろうとしなかった。俺ははや、それだけであいつを許せねえ」
伊勢次の瞳は、むしろ怒りよりも戸惑いと哀れみの入り混じった感情が宿っていた。お彩は、伊勢次にそんな風な眼で見つめられることが、たまらなく哀しかった。
伊勢次の瞳は、むしろ怒りよりも戸惑いと哀れみの入り混じった感情が宿っていた。お彩は、伊勢次にそんな風な眼で見つめられることが、たまらなく哀しかった。

