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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】 其の弐

怒りに任せて言う伊勢次に、お彩はかすかにかぶりを振った。
「私に辛抱が足りなかったんです。このことは誰のせいでもなく、私自身の至らなさからきたことなの。私にきっと京屋ほどの大店のご新造になるだけの覚悟がなかったんだわ」
「お彩ちゃん―」
伊勢次は信じられないものでも見るような眼でお彩を見た。
「お前って奴は、ここまで酷(ひで)え目にあわされても、まだあの男を庇うのか? 良いか、お彩ちゃん、よく聞くんだ。俺が知る限り、お前はけして辛抱も根性もねえ甘ったれなんかじゃない。ましてや、京屋ほどの大店に嫁ぐってことが何を意味しているかも十分理解していたろうし、それなりの覚悟もしていただろう。
「私に辛抱が足りなかったんです。このことは誰のせいでもなく、私自身の至らなさからきたことなの。私にきっと京屋ほどの大店のご新造になるだけの覚悟がなかったんだわ」
「お彩ちゃん―」
伊勢次は信じられないものでも見るような眼でお彩を見た。
「お前って奴は、ここまで酷(ひで)え目にあわされても、まだあの男を庇うのか? 良いか、お彩ちゃん、よく聞くんだ。俺が知る限り、お前はけして辛抱も根性もねえ甘ったれなんかじゃない。ましてや、京屋ほどの大店に嫁ぐってことが何を意味しているかも十分理解していたろうし、それなりの覚悟もしていただろう。

