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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第26章 第十一話 【螢ヶ原】 其の弐

「違うの、あの人は、私が身ごもっていることを知りません。何も知っちゃあいないのよ」
が、伊勢次は怒りのあまり、お彩の話なぞ端から耳に入ってはいないようだ。
「あの野郎、自分の子を宿してると知りながら、よくもこんな酷え仕打ちを」
伊勢次がおもむろに立ち上がる。
「許せねえ」
呟いた伊勢次にお彩は取りすがった。
「違うの、伊勢次さん。お願い。私の話をよく聞いて。京屋の旦那様は何もご存じではありません。私が勝手に誰にも知らせないで家を飛び出してきちまったのよ」
泣きながら訴えるお彩の顔を、伊勢次は茫然と見つめた。
「だが、お彩ちゃんが出てゆくように仕向けたのは他の誰でもねえ、あの旦那だろう?」
が、伊勢次は怒りのあまり、お彩の話なぞ端から耳に入ってはいないようだ。
「あの野郎、自分の子を宿してると知りながら、よくもこんな酷え仕打ちを」
伊勢次がおもむろに立ち上がる。
「許せねえ」
呟いた伊勢次にお彩は取りすがった。
「違うの、伊勢次さん。お願い。私の話をよく聞いて。京屋の旦那様は何もご存じではありません。私が勝手に誰にも知らせないで家を飛び出してきちまったのよ」
泣きながら訴えるお彩の顔を、伊勢次は茫然と見つめた。
「だが、お彩ちゃんが出てゆくように仕向けたのは他の誰でもねえ、あの旦那だろう?」

