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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

「いらっしゃいまし」
脚を踏み入れるのと同時に、奧から愛想の良い声が聞こえ、小柄な女が姿を現した。年の頃はおっつけ三十にはなると思われる艶な女だ。
「何かご入り用でいらっしゃいますか」
唐突に問われ、伊八は思わず口ごもった。
「い、いや、その」
年甲斐もなく少年のように頬を上気させる自分が恥ずかしいやら、みっともないやらで、伊八は幾度このまま踵を返して帰ろうと思ったことだろう。が、そんな大人げないふるまいは尚更できず、赤らんだまま早口で言った。
「娘の正月用の晴れ着を探しにきたんです」
霜月も半ばを過ぎ、今年も残すところわずかになった。伊八は一人娘のお彩のために正月の晴れ着をと思い立ったのである。
脚を踏み入れるのと同時に、奧から愛想の良い声が聞こえ、小柄な女が姿を現した。年の頃はおっつけ三十にはなると思われる艶な女だ。
「何かご入り用でいらっしゃいますか」
唐突に問われ、伊八は思わず口ごもった。
「い、いや、その」
年甲斐もなく少年のように頬を上気させる自分が恥ずかしいやら、みっともないやらで、伊八は幾度このまま踵を返して帰ろうと思ったことだろう。が、そんな大人げないふるまいは尚更できず、赤らんだまま早口で言った。
「娘の正月用の晴れ着を探しにきたんです」
霜月も半ばを過ぎ、今年も残すところわずかになった。伊八は一人娘のお彩のために正月の晴れ着をと思い立ったのである。

