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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

竹庵はもう七十はこようかという老医者であるが、父親の代から医業に携わっており、「花がすみ」の近くに診療所兼自宅の小さな仕舞屋を構えている。貧乏人からは診察料も施薬料も取らぬと評判で、庶民には慕う者も少なくはない。
こんな逸話がある。ある夜、若い大工の夫婦が三つになる幼い倅を連れて、竹庵の許に駆け込んできた。竹庵は、男児の腹痛が内科的処置だけでは足らぬと診立て、すぐに手術を行った。若い頃に長崎に遊学してオランダ医術を修めた竹庵は優秀な外科医でもあった。
こんな逸話がある。ある夜、若い大工の夫婦が三つになる幼い倅を連れて、竹庵の許に駆け込んできた。竹庵は、男児の腹痛が内科的処置だけでは足らぬと診立て、すぐに手術を行った。若い頃に長崎に遊学してオランダ医術を修めた竹庵は優秀な外科医でもあった。

