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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

迅速で適切な処置のお陰で幼児は一命を取りとめた。しかし、大工には金を払うだけの持ち合わせがなかった。ひたすら恐縮する大工に竹庵は呵々大笑して言ったという。
―支払は、お前さんがいっぱしの棟梁になってからで良いってことよ。出世払いだから、高くつくことは覚悟しとけよ。
竹庵は大工の肩を叩き、そう励ました。後に若い大工は本当に小さな組だが数人の若い者を使う親方となり、そのときの金をすべて返したそうだ。今はそのときの小さかった倅もいっぱしの大工となり、父の片腕として働いているという。
竹庵の人柄を窺わせる話だが、この名医の唯一の欠点は、大の酒好きということであった。
―支払は、お前さんがいっぱしの棟梁になってからで良いってことよ。出世払いだから、高くつくことは覚悟しとけよ。
竹庵は大工の肩を叩き、そう励ました。後に若い大工は本当に小さな組だが数人の若い者を使う親方となり、そのときの金をすべて返したそうだ。今はそのときの小さかった倅もいっぱしの大工となり、父の片腕として働いているという。
竹庵の人柄を窺わせる話だが、この名医の唯一の欠点は、大の酒好きということであった。

