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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

「旦那さん、どうしたんですか、一体、何があったっていうんです?」
お彩が矢継ぎ早に訊ねると、喜六郎は口を動かそうとした。その時。
喜六郎が胸許を押さえ、小さな呻き声を洩らした。次の瞬間、喜六郎の小柄な身体はドサリと音を立てて地面に倒れ込んだ。
お彩には、まるで刻がその一瞬だけ制止してしまったかのように思えた。ゆっくりと傾(かし)いでゆく喜六郎、初夏を思わせる強い陽差しに照らされる白い道。
喜六郎が倒れた拍子にもうもうと上がる土埃(つちぼこり)。
すべてが悪い夢を見ているかのようだった。我に返った刹那、止まっていた時間が慌ただしく動き始めた。
お彩が矢継ぎ早に訊ねると、喜六郎は口を動かそうとした。その時。
喜六郎が胸許を押さえ、小さな呻き声を洩らした。次の瞬間、喜六郎の小柄な身体はドサリと音を立てて地面に倒れ込んだ。
お彩には、まるで刻がその一瞬だけ制止してしまったかのように思えた。ゆっくりと傾(かし)いでゆく喜六郎、初夏を思わせる強い陽差しに照らされる白い道。
喜六郎が倒れた拍子にもうもうと上がる土埃(つちぼこり)。
すべてが悪い夢を見ているかのようだった。我に返った刹那、止まっていた時間が慌ただしく動き始めた。

