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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

お彩がひととおり道を掃き終えたまさにその時、金物屋と筆屋の前を横切り、喜六郎がこちらへ歩いてやってくるのが見えた。段々と近付いてくるその顔が心なしか蒼ざめているように見えるのは気のせいだろうか。
「お帰りなさい」
お彩は伸び上がるようにして片手を上げ、思い切り振った。が、いつもなら屈託のない笑顔を見せるはずの喜六郎が殆ど表情も変えずに、お彩を見つめた。そのまなざしのあまりの暗さに、お彩はハッとした。
これは只事ではない―、警鐘がしきりに鳴った。喜六郎は真っすぐに歩いてくると、お彩の面前で止まった。その顔色は蒼白というより、殆ど血の気がないと言って良かった。
「お彩ちゃん、大変なことになっちまった」
喜六郎が蒼ざめた顔で呟く。
「お帰りなさい」
お彩は伸び上がるようにして片手を上げ、思い切り振った。が、いつもなら屈託のない笑顔を見せるはずの喜六郎が殆ど表情も変えずに、お彩を見つめた。そのまなざしのあまりの暗さに、お彩はハッとした。
これは只事ではない―、警鐘がしきりに鳴った。喜六郎は真っすぐに歩いてくると、お彩の面前で止まった。その顔色は蒼白というより、殆ど血の気がないと言って良かった。
「お彩ちゃん、大変なことになっちまった」
喜六郎が蒼ざめた顔で呟く。

