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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

喜六郎がどこまで話しているかは判らないけれど、伊勢次との駆け落ちまで話しているとは限らない。が、過去は一切気にしないとお彩に言い切ったように、安五郎は喜六郎から教えられたこと以外、お彩に何も追及しようとはしなかった。こんな男と所帯を持てば、お彩は今度こそ、これまでけして手に入れられなかった穏やかな幸せを得られるだろう。
だが、それは叶わないことだ。お彩の心の中に京屋市兵衛が棲みついている限り、お彩はけして市兵衛の呪縛から解き放たれることはないのだから。他の男を愛しながら、また別の男と幸せを掴むことはできない。そのことを、お彩は伊勢次との哀しい別れでいやというほど知った。伊勢次を喪った日、同じ過ちを二度と繰り返さないと、決めたのだ。
だが、それは叶わないことだ。お彩の心の中に京屋市兵衛が棲みついている限り、お彩はけして市兵衛の呪縛から解き放たれることはないのだから。他の男を愛しながら、また別の男と幸せを掴むことはできない。そのことを、お彩は伊勢次との哀しい別れでいやというほど知った。伊勢次を喪った日、同じ過ちを二度と繰り返さないと、決めたのだ。

