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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

「本当にありがとうございます。でも、やはり、今はまだ所帯を持つことは考えていないんです」
お彩が繰り返すと、安五郎は苦笑した。
「そうですか。それでは、仕方ありませんね。はっきりとフラレちまっちゃア、どうしようもねえ」
「―」
お彩は返す言葉もなく、うつむいた。
安五郎は静かな口調で言った。
「なに、気にすることはありませんよ。確かに、何も知らねえ者同士だから、お彩さんがそう言うのは当たり前のことです。それよりも、お彩さん、所帯を持つ云々の話はそこまでとして、私は板前として一度だけ、お彩さんに訊いておきたかったんです。板前としての私をお彩さんもまた一人の板前として、どう見ますか」
お彩が繰り返すと、安五郎は苦笑した。
「そうですか。それでは、仕方ありませんね。はっきりとフラレちまっちゃア、どうしようもねえ」
「―」
お彩は返す言葉もなく、うつむいた。
安五郎は静かな口調で言った。
「なに、気にすることはありませんよ。確かに、何も知らねえ者同士だから、お彩さんがそう言うのは当たり前のことです。それよりも、お彩さん、所帯を持つ云々の話はそこまでとして、私は板前として一度だけ、お彩さんに訊いておきたかったんです。板前としての私をお彩さんもまた一人の板前として、どう見ますか」

