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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

河津屋は頷き、顎をしゃくった。
既に大分前から襖の向こう側に待機していたものか、すぐに襖が開いて、お美杷を抱いた番頭が現れた。どうやら主の悪巧みを知らされたばかりらしい番頭は真っ青で、傍目でもそれと判るほどに震えている。
「お美杷」
お彩が叫んで駆け寄ろうとする。それを後ろ手で制して、市兵衛が言った。
「良かろう、子どもをこちらへそっちが渡すのと同時に鑑札をそっちへ渡そう」
お彩が進み出る。お美杷が番頭の手から渡されるのを見届け、市兵衛は鑑札を河津屋の前に無造作に放り投げた。
木の札が落ちる乾いた音が部屋に満ちた静寂の中、響いた。
既に大分前から襖の向こう側に待機していたものか、すぐに襖が開いて、お美杷を抱いた番頭が現れた。どうやら主の悪巧みを知らされたばかりらしい番頭は真っ青で、傍目でもそれと判るほどに震えている。
「お美杷」
お彩が叫んで駆け寄ろうとする。それを後ろ手で制して、市兵衛が言った。
「良かろう、子どもをこちらへそっちが渡すのと同時に鑑札をそっちへ渡そう」
お彩が進み出る。お美杷が番頭の手から渡されるのを見届け、市兵衛は鑑札を河津屋の前に無造作に放り投げた。
木の札が落ちる乾いた音が部屋に満ちた静寂の中、響いた。

