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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

番頭が慌てて鑑札を拾う。
市兵衛が用は済んだとばかりに背を向ける。まるで相手を侮っているかと思うほど無防備な背中であった。
ふいになだれ込んできた数人の用心棒たちが刃を振り上げる。
が、その動きは河津屋のひと声で封じられた。
「止めろッ」
それでもなおも一人の浪人者らしい男が切りつけようとするのを、河津屋は一喝した。
「止めろと言ってるのが聞こえねえのか」
河津屋が忌々しそうに言った。
「京屋ほどの大商人(おおあきんど)をここで河津屋が殺したとなれば、回りも黙っちゃいまい。大人しく鑑札をこちらによこしたんだ。ここは捨て置け」
市兵衛が用は済んだとばかりに背を向ける。まるで相手を侮っているかと思うほど無防備な背中であった。
ふいになだれ込んできた数人の用心棒たちが刃を振り上げる。
が、その動きは河津屋のひと声で封じられた。
「止めろッ」
それでもなおも一人の浪人者らしい男が切りつけようとするのを、河津屋は一喝した。
「止めろと言ってるのが聞こえねえのか」
河津屋が忌々しそうに言った。
「京屋ほどの大商人(おおあきんど)をここで河津屋が殺したとなれば、回りも黙っちゃいまい。大人しく鑑札をこちらによこしたんだ。ここは捨て置け」

