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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

市兵衛はなだめるようにお彩の肩を叩き、後ろへ退がらせた。
「河津屋さん、約定どおり、松平様へのお出入り許可の鑑札は持ってきた。だが、これを今ここであっさりとお前に渡すほど私も馬鹿じゃねえ。まずは、子どもを先にこちらに返して貰おう」
「おっと、そうはゆかねえ。氷の男の異名を取るほどの京屋さんだ。あっさりとガキを返して、それでおしまい、肝心の鑑札は渡して貰えねえということだって十分あり得る。鑑札をこちらへ渡すのが先だ」
市兵衛はニヤリと口の端を上げた。
「なるほど、随分と用心の良いことだ。しかし、これだけは譲れねえ。ひとまず娘の無事な姿を見てから、取引に応じよう」
「河津屋さん、約定どおり、松平様へのお出入り許可の鑑札は持ってきた。だが、これを今ここであっさりとお前に渡すほど私も馬鹿じゃねえ。まずは、子どもを先にこちらに返して貰おう」
「おっと、そうはゆかねえ。氷の男の異名を取るほどの京屋さんだ。あっさりとガキを返して、それでおしまい、肝心の鑑札は渡して貰えねえということだって十分あり得る。鑑札をこちらへ渡すのが先だ」
市兵衛はニヤリと口の端を上げた。
「なるほど、随分と用心の良いことだ。しかし、これだけは譲れねえ。ひとまず娘の無事な姿を見てから、取引に応じよう」

