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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

朝まだ早い中とて、広い店内には客の姿はまばらであった。手代たちが棚から出してきた反物をひろげ、それぞれ客の相手をしている姿があちこちで見られる。
市兵衛は、競争相手の商いぶりにはとんと興味がない様子で、眉一つ動かさず、その場に佇んでいた。それでも市兵衛はただそこにいるだけで圧倒的な存在感があり、河津屋の手代たちが何事かと時折こっそりとこちらを窺っているのが判る。
ほどなく先刻の番頭が再び現れ、
―どうぞ奥へお通り下さいませ。
と、今度は人が変ったような丁重な応対ぶりを見せ、二人は磨き抜かれた廊下を辿り、奥の座敷へと案内された。
そして、現在、河津屋の主人仁左衛門をこうして客間で待っているのであった。
市兵衛は、競争相手の商いぶりにはとんと興味がない様子で、眉一つ動かさず、その場に佇んでいた。それでも市兵衛はただそこにいるだけで圧倒的な存在感があり、河津屋の手代たちが何事かと時折こっそりとこちらを窺っているのが判る。
ほどなく先刻の番頭が再び現れ、
―どうぞ奥へお通り下さいませ。
と、今度は人が変ったような丁重な応対ぶりを見せ、二人は磨き抜かれた廊下を辿り、奥の座敷へと案内された。
そして、現在、河津屋の主人仁左衛門をこうして客間で待っているのであった。

