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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

お彩は改めて座敷内を見回す。
流石は京屋に次ぐ大店というだけあって、十畳ほどの座敷には床の間に狩野派の絵師の手になる掛け軸が掛けられ、その前には、さりげなく大ぶりの備前焼に桜のひと枝が活けられている。
そういえば、廊下を歩いてここにくるまでの途中、庭に桜の樹があるのがかいま見えた。遅咲きの品種なのか、江戸市中の桜はそろそろ盛りを過ぎようというのに、折しも今が満開のようである。まるで、そこだけ淡い桃色にけぶったように、桜色の霞が立ち込めているようにさえ見えた。
桜はたった今、庭から切り出してきたばかりのようにみずみずしく、大人の腕にひとかかえもあろうかというほどの大きさだ。
流石は京屋に次ぐ大店というだけあって、十畳ほどの座敷には床の間に狩野派の絵師の手になる掛け軸が掛けられ、その前には、さりげなく大ぶりの備前焼に桜のひと枝が活けられている。
そういえば、廊下を歩いてここにくるまでの途中、庭に桜の樹があるのがかいま見えた。遅咲きの品種なのか、江戸市中の桜はそろそろ盛りを過ぎようというのに、折しも今が満開のようである。まるで、そこだけ淡い桃色にけぶったように、桜色の霞が立ち込めているようにさえ見えた。
桜はたった今、庭から切り出してきたばかりのようにみずみずしく、大人の腕にひとかかえもあろうかというほどの大きさだ。

